バイト先の魔法少女JKの話
バイト先のJKに、子供の時の将来の夢が魔法少女だった子がいるんですよ。あ、今は違うらしいんですけど。あ、でもこの前、マジカルマジカル〜☆って言いながら皿洗いしてたからもしかしたらまだ諦めてないのかな?皿洗いに魔法もクソもないと思うんだけどね。
その子が最近いろいろヤラかしてくれるので俺のストレスがマッハレスって話でして。
最近その働いてるバイト先の居酒屋がチーズタッカルビとか誕生日ケーキを作ったりとかのサービス始めたんですけど、これがものすごい曲者。チーズタッカルビとか作るのめんどくさすぎて忙しい時に来たらハゲ散らかすレベルで嫌い。死ね。
特に誕生日とかの人がいたら無料でアイスの盛り合わせみたいなの注文できるシステムがあるんですよ、サーティワンのアイスタワーみたいなの作って、チョコで『Happy Birthday ☆ MIYU』とか書いて持ってくの。こんなクソみたいな居酒屋で注文するくらいなら普通に買ってきた方が絶対良いんすよ。タダってのが魅力なんでしょうけど。
んでこの前けっこう忙しい時に4人組OLからその要望が来て。
誕生日と結婚を祝うらしいんですけど、それ祝うなら普通に店で買えよって話じゃないですか。絶対祝う気ないんですよ。ゼロ。
んで、名前とか年齢とか聞いてたんですけど、
『てかこれってタダですよね?』
ってOLが食い気味に聞いてくるもんだから
『え、あ、はい。料金はかかりませんよ』とか俺も慌てて答えたんですけど、いや待てよと。
まさかの金払う気もゼロなんすよ…。金かけたくないなら祝うんじゃねえよと。
いやまあこっちも接客業なんで、同じプライスレスの笑顔振りまくんですけど、もうこの時点でクレーマーの匂いヤバイんですよ。地雷臭がハンパじゃない。帰りたい。おウチ帰りたい。
んで高校生のアルバイト(JK)に、名前と描く内容聞いて作っといてって言ったんですよ。忙しいしめんどくさいし。そしたらそのJKが、『てるさん、バースデイとウエディングのつづり忘れました!』つって。
え………?おまおまおまおま、いや、、、高校生?義務教育終わってますけど大丈夫?どうした?『忘れました』って、いや、わかんないの間違いだよね?なんで少し見栄張ったの?この前インスタで友達の誕生日祝ってたじゃんって。100歩譲りたくないけど忘れたとして、お前が左手に持ってるスマホは飾りかな?実はただのかまぼこ板だったり?元気よく言って誤魔化そうとしてるけど結構ヤバいよそれ?
とかまあ言ってもしょうがないしやらざるを得ないわけで。『3卓のお客さんで、24歳のミコさんって名前の人です!』って言うから、『Happy birthday and wedding MIKO 24 years old』ってチョコで描いて。普通に上手くできる俺。
んで、出す前にJKが『そう言えばケーキ出す時盛り上げてくれって言ってました!』つってくるんですよ。他人事。
も、盛り上げる?え、盛り上げ方がわかんないんだけど。おおお踊っちゃう?ササササンバとか踊っちゃえばよろしい?マンボ?
『ハッピバースデーの歌でも歌えばいいんじゃないですか?』
あーーー、なるほどねハイハイ、って。
結構急いでたのと、JKが『私も手拍子します!』って言うもんだから、いやまあお前も歌えよって話なんですけど、ささっと歌ってキッチン戻ろって。
チャチャラ〜ラ〜ラ〜ラ〜♪
ハッピバァ〜スデ〜イトゥ〜ユ〜⤵︎
ハッピバァ〜スデ〜イトゥ〜ユ〜⤴︎
ハッピバースデーディアミィィィィ⤴︎コォォォ⤵︎
ハッピバァ〜スデ〜イトゥ〜ユ〜〜〜〜☆
おめでとうございま〜〜〜〜す!!!
………いやいやいやいや無理無理無理無理!!20歳のおっさんが仕事疲れのOL飲み会に歌歌いながら突入?え、何それなんの特殊部隊?だ、大丈夫?通報されませんか?ねえJKちゃん笑ってるけど他人事だと思ってない?君が本来やるべきことなんだよこれ?君、俺のこと実は嫌いだよね?
流石に歌は無理っつって、『ごめん普通におめでとうございます〜!みたいな感じで突っ込むわ』って言って、その座敷に突入したんですよね。
突入後即制圧!目標を照準に入れてスイッチ!みたいなハイスピード☆ハイテンションで、
『ミコさん24歳お誕生日おめでとうございます!ハッピー!バースデイ〜〜!!!!』
イエーーーーイ!つって。
飲み会の時のテンションでアゲ⤴︎アゲ⤴︎して。
でもなんかおかしいんすよ。
座ってる人、全員おっさん。子持ちのサラリーマン。間違っても『希望の年収は1000万以上☆』(24歳 OL)みたいなのはいないわけで。みんな、は?みたいな顔でこっち見てくるんすよ。時間止まってる。DIOのザ•ワールドみたいな感じ。スタンド使っちゃってる感じ。
しかも襖で仕切られた隣から、『えっそれ私たちじゃね…?』みたいな声聞こえるんすよ。明らかに突入するとこ間違えたみたいな。
いやまさかね、間違えたとかそんな訳ねえべっつって、恐る恐るJKの方振り向いたんですよ。首だけゆっくり動かして。
JKが泣きそうな顔で
『てるさんごめんなさい、隣の卓でした…』
って。
お、おまっ、おまま、おまえ〜〜〜〜!!!!ってキレる俺。キレ散らかしまくる俺。ケーキ渡す客間違って俺に伝えやがったって。1番やって欲しくないミスだぞオイって。
100歩譲って俺が恥かいたのはいいとして、いや何一つ良くないというかそれが1番クソなんですけど、何より空気がヤバいんすよ。サプライズがぶっ壊れた瞬間。ドッキリの仕掛けがわかっちゃったとかそういうレベルじゃあないわけで。おっさんズもOLズも俺も誰も幸せにならない。LOSExLOSEの極み。米津の玄師が裸足で逃げ出すレベル。俺も逃げ出したい。
結局おっさんたちが笑って許してくれたんでOLの方に持ってったんですけど、空気がエグい。『わ、わ〜〜〜ありがと〜〜……』みたいな。知りたくなかったサプライズ知ったらそうなりますけど。祝われてるOL、ガンバレルーヤのヨシコみたいな顔してたよね。元から?多分後で『クソが!』とか絶対言ってるよね。
そんな絶対零度の空気の中でケーキ出して帰ろうとしたんですけど、ドア閉めようとした時にそのヨシコがボソって言ったんですよ。
『私、23歳なんだけど……』
ん〜〜〜JKちゃん、君ホントに魔法少女なんだね。時間止める能力持ってるよ☆いや〜ホントにマジカル☆だね!時、止まってる〜☆
そう、マジカルマジカル、お前はプリキュア!
……………
いやお前逃げんなお客さんに謝れ俺は悪くねぇ絶対許さねぇからなオイゴラァァ!!!!新人だからって許されっと思ってんじゃねぇぞオラァァァァァッ!!!!!テメェブッコロッゾォオルルルァァァァァ!!!!!爆ぜ散らかせゴルルウウァァァ゛ァ゛!!!!!!!